006:重力をなくして

「だからぁ、魂が元素で構成されてない以上幽霊は存在しねーんだよ」「へー、でも宇宙人も存在は確認されてないわけだろ?」
 「深海に生き物がいるんだから適応生物くらい存在してるって考えがベターだ」「じゃあ魂を構成する元素が判明すれば幽霊は照明されるわけだ」
 「チェルカトル、準備できましたよ」「サンキュー、ガラナイツ」「そりゃそうだがな」
 「トパゾスもこいつも…ったく、幽霊なんかいねーってのによぉ」「そこがあいつの可愛いとこだよ」
 …
 「テメェ爽やか王子みてぇな外見しといてロリ趣味か!!!言っとくけどあいつは俺が先に食うの!!つーか誰お前」 「うおっなんだあいついきなり」「すみません慣れてください」
「先生とキサって子は?」「ここにいます」
 「よおチェルカトル」
 「うんこ漏らしたんですか?」「毎日体勢変えてんだよバカ」
 「排便してないってこと?」「飯はやってるけどな」
 「へぇー」
「お前名前は?」「…」「あーはいはい、そういう反応ね」
 「お前の使った変な術って何?」「…」「仲間いるだろお前、そいつもそれ使える?」
 …
 「この子知らない?誘拐された俺の妹」「は?」
 …
 …
 …
ズッ
 バク
 パキィィン!
 バサッ
 「やあ、今日は君一人かい?保護者はどうした保護者は」「あ、トムくん」
「オリビンならヒスイと一緒にお仕事だよ」「ふっあの女がママ代わりの自覚はあるようだ」
 「え、いやオリビンとお話したかったのかなって」「いつまでしてんだその勘違い?!」
 「何であんたは行かなかったのよ?」「身長が低いとダメな依頼なんだって」
 「学園の依頼案内所で自分も仕事を探せばどうなんだ」「え‥でも人一いっぱいいるし」「ナードがすぎる」
 「ったく、顧問仲介依頼ばかり頼ってたら受け身になるぞ。チャン達のついでに案内してやるよ」
 「ありがとうっ」「僕に感謝しろ!!」
「ルシウス坊や倒した子ってマジ!?」「ありがてー、処理できない依頼けっこうあってさ」「顧問付きチーム!?全依頼オッケーじゃん!」「こんな仕事あるけどどうよ?!」
 「助けなくていいの?」「僕に勝つならあの程度覚悟すべきだからな」
 ぐいっ
 「もっといい依頼があるよ」
 「は‥‥はい‥」
「セラフィってスラム街のマジシャンだ。主に子供を狙うやつで街の子供の9割が食われてる」
 「ハーメルンの笛吹き男みたい」「なんだその頭お祭り人間みたいな名前」
 「知らないの?」「お前の常識が世間の常識だと思うな」「ただこのあたりには幽霊が出るって噂があってね」
 「「幽霊!?」」「ただでさえ人気のないスラム依頼でも指折りの不人気」
 「じゃあボク行きます」「ばっバカ!!そういう噂が立つのは大抵治安か立地が悪い場所なんだよ!!」
 「トムくん幽霊さん怖いの?」
 「怖いわけあるか!!いや行かないけど!!」
「チャンくん達と一緒ならどう?」「チャンは細い方だよ」「そもそも俺達はチームに入ってないから」
 「?でもトムくんって‥」「僕のチームは名家しか入れない。仕事は倶楽部じゃないんだぞ」
 「でもお仕事も楽しいほうが良くない?これ受理してください」「はん、理想論だね。それに僕は君と違ってじゅうぶん充実しているけど?」
 …
 「行ってきます」「僕の話聞いてたかお前!?」
 「ねぇルシウスくん、さっきの君の家庭教師の人?」「は?何の話ですか急に」「教員校章勝手に使わないでって言っといて」
「職員名簿探したけどいないじゃん、あの人」
 …
 …
 「なんだか」
 「栄えてるけど暗い感じする」「オイ」「不思議な街だね。スラムってもっと極端だと‥‥」「オイ」
「おい!!」「!?」
 「無視は良くないなぁお嬢ちゃん」「え、え」「さっきのって真銀でしょ?俺たちに恵んでくれない?」
 「えっムリです、しちゃいけないって決まりが。お店で売ってますよ」
 「俺らがお店に売るっつってんだろ!!」「ひっ」
 「いい身分~武器出せるだけで格安配布だぜ」「やっ」「価値分かんねぇガキが持つもんじゃねんだわ」
 (だ…誰か‥)
(み‥みんな知らないフリしてる…)
 「!」
 「ウィチェストと候補生は民間人に危害加えちゃダメなんだよね~」
 「ほらぁ、自分から差し出さないから切り落とされちゃうよ~ん。痛いねぇ怖いねぇ」
 「い…いや‥」
・
 …
 ドサ…
 …
…
 「…あ?」
 「なに調子乗ってんだジジイ!!」
 ゴキャ
 ガッ
ゴリュ
 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
 「やめろゴミ野郎!!」
 ドス
 …
ガンッ
 「え」
 「ちょっウソ。ま、待って、待ってくれ」
 「た‥頼む止めて。やめろ!やめてください!待って!待ってやめて!」
 「い゛や゛っうわああ」
…
 「あ…ありがとうございます‥‥」
 「も‥もう十分なので‥」
 …
 パチン
 くる
「あっあのすみませんでした。えっと、ここの人ですか?な‥何かお礼とか…‥」
 ぐいっ
 べろんっ
 「ひぃいいいぃいぃぃいぃい」
 くるくる
 「俺はまだマシな気色悪さだぞ。わかったらこんな場所入り浸るな」「ごめんなさい…‥」
「人を助ける奴の大半は搾取が目的だ。襲うやつと助ける奴がグルの場合もある。礼だの軽々しく口にするな」
 「俺がエゴの善意を自覚している間に帰れ」「‥‥」
 「もしかして」
 「その子の飼い主さんですか?」
 …
 「お前はそいつを守ってろ」「あ、おじさん」
 「まだ何か用か」「ボク、ユリウス学園に通ってるんです」
「何かボクにできることがあったら来てください」
 「お酒代くらいのお礼はしたいんです。ボクのエゴで」
 …
 …
 「近いうちに行く」
 …
 (ビッツを迎えにな)
あははははは
 「んなわけわかんねぇ尋問初めて見たわ!心理実験かなにか?まあいいや。チェルカトルだっけ」
 「俺はビッツ。お前のさっきの質問だけど」
 「一つだけ答えるよ。お前の言う変な術ってやつのこと。俺のアレは{アリス症候群}」
「魔法。っつーんだよ」
 …
 「私が口を割らせます」「おい」
 「答えなさい、彼女たちを襲った奇術は何ですか」
 (やっぱり…だが)
 (こいつ)
 (何で魔法の存在を知ってる?)
「クソ。ふざけやがってあの白髪野郎!」「今月赤字だぞこれ‥‥」「!おい!」
 「どうした?「騒ぐんじゃねーぞ」
 …
 「ガキごとやるか?」「真銀も売れりゃ相当な値だな」
 「けどマジシャンはもういねぇぞ、俺らがガキ殺ってた足が付くかもだぜ。最悪パーツの密売ルートもバレちまう」
「バーカ、サツが嗅ぎまわるなら候補生なんか来ねーよ」
 「候補生に回る仕事っつーのはウィチェストのお下がりだろ。つまり危険度が低いってみなされてんだ」
 「危険度が低いくせにガキの失踪に今まで警察一人来なかったんだぞ。今更過去の失踪を調べたりするか?」
 …
 「いくらで売れると思う?」「パーツの値段は変わんねーよ」
 「一旦変態相手に身売りやらせりゃ儲けるぞ」「いいねぇ、あいつはウケるぜ」
グオン!!
 (な…何だ)「ん゛。む゛」(身体が、空気が重い‥!?)
 オオオオオオオオオオ
…
 (ふ…ふざけんな!!ふざけんな!!何だよこれ!?何だよこいつ!?)
 ガッ
 パキン
パキ 「?!?!!」パキ「なぁニ」パキ「ガ」パキ「!!?」パキ
「ワゲットガゴ!!ガギルヤゴゥ」「?!ワギィ!?」
「カガントサク、ピー」
 ブチュン
 ドシャ…
 ばりっばりっ
 ばりっばりっばりっ
 ポタ…
…
 …
 「鳥のおっさん」
 「牛の兄ちゃんが用意した飯、捕まえた?」
 「舌を噛み切ってなければ二人とも生きてる」「さすが若造♪」
 「小さい女の子一人って聞いたぞ」「食えればいいだろ何でも」「うわ!ねぇ小僧!これ!」
「これが幽霊に見えたっぽい。我輩が降ろすからね」「それ食う?馬のじーさん。俺はいらね」「食えんだろこんな可哀想なの」「ぶは」
 「おい!お前ッ‥助けてくれ!!」「おっどうしたどうした」
 「そこの男!!マジシャンに似た化け物なんだよ!!俺の仲間を一人食いやがった!!」
 「仲間も同じような化け物にされて…お前らも早く逃げねぇと食わ」「あー」
 「ラギトバガックアクトヤグゥ」
…
 「子供の方が美味いけど屑の方が食ってて気分いいな」「たすけて!!誰か」
 「あ、そういや若造、今日安酒じゃないんだな。いいことでもあった?」
 バタン
 …
 「さあな」
…
 …
 …
 …
 「幽霊さん結局いなかったねー」

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